ベイビーベイビーベイビー
 

 綾乃はベランダの設けられている窓辺に歩み寄ると、外の光を遮っているカーテンを開けた。

 明かりも点けないでいた薄暗い部屋は幾分明るくなったが、相変わらず東京の空には雲が蔓延っている。

 そんな中で雲の隙間から地上へと伸びる光は、力強く、美しく見えた。


 その美しさは綾乃の凍えた心にも届いたのか?

「天国への階段って、本当にあるのかしらね――…」

 綾乃の口からも、そんな言葉が漏れ出た。

 そして窓を明けた綾乃は、空気の冷たいベランダに出た。


 今まさに祥吾の身体は煙となり、天に還るところでなのあろうか?

 その光の帯の神秘的な様子から、綾乃は目が離せなかった。







~『ベイビーたちのプライド』 綾乃~


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