ベイビーベイビーベイビー
 
 今すぐにでもおしゃべりを始め、それにのめり込んでしまいそうな二人の様子を、カウンター横に立つロング丈の黒のエプロンを巻いたウェイターが気にしている。

 真理江と冴子はおしゃべりを一時中断すると、とりあえずメニューを広げ、ドリンクとパスタなどの軽い食事を数点選び出した。

 そしてそのウェイターを呼ぶと、今ピックアップしたメニューを全てオーダーした。
 
「かしこまりました」

と物腰柔らかくあたまを下げ去っていくウェイターを見送ると、真理江は堰を切ったように、珍しいほど強い口調で話を始めた。


「冴子の言うとおりだったわ」

「え? 私、何か言ったかしら?」

 冴子は、ついこの間まで元気のなかった真理子が、今度は怒りを抑えている様子であるのに驚きながらも、自分のどんな発言に賛同をしてくれているのか全く分からないといった顔をして真理江を見返した。


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