ベイビーベイビーベイビー
 
「私の知らないところで、奥さんともちゃんと連絡を取り合っていたのよね。
 私ったら何にも知らないで、一人で勝手に将来の事なんかまで考えちゃったりして。
 もう、悔しくて悔しくて……」

「そりゃそうよ。
 どういうつもりなのかしらね。とにかく許せないわ。
 どちらにせよ、もう辞めないと!
 こんなのちっとも真理江の為にならない!」

 同じ言葉であるが、冴子はもはやあの時のように、冷静に真理江にそれを伝える事ができなかった。


「ありがとうね、冴子。
 情けなさすぎて言い辛いんだけど、祥吾、携帯電話の番号も変えちゃったみたいなんだ。
 私の意志云々じゃなくて、向こうも私と続ける気なんてないみたいだから」


「えぇっ…なん――……!」


 言葉を失うとはこいう事だろうか。
 言葉を発する代わりに、冴子はドリンクのグラスが割れてしまうのではないかというほど強く握り締めた。



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