ベイビーベイビーベイビー
 

 本当は、祥吾のマンションから帰るつもりなどなかった。

 しかし常に綾乃を心配している両親が、綾乃を連れて帰るべく暗くなる前にマンションまで迎えに来ていたのであった。


 いつぞや綾乃がほのめかした“自殺”という選択がどれ程のものか、正直言って両親にも分からなかった。

 もしかしたら、祥吾との口げんかでつい出てしまった売り言葉に買い言葉だとも思えなくもない。

 けれど、祥吾を失ったばかりか、古澤の家から離縁まで突きつけられた綾乃が、今回は別人のように落ち着き払い、取り乱す事もない様子であるのに、妙な違和感を感じずにはいられなかった。



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