ベイビーベイビーベイビー
幸い、まだ真理江は一人で立ち、歩くことができた。
けれど、
「ありがとうねぇ」
と言いながらも、意識はどこか遠くにいるようであった。
冴子は「やれやれ」と言って微笑を浮かべると、
「今日は心配だから、私の家に連れて帰るね?いい?」
と真理江に告げた。
すると真理江も、
「ありがとう、冴子ぉ。
うーん、なんだか気持ちがいいわ」
そんな冴子に「うふふ」と笑って応えた。
酒に酔うと言っても、真理江はただ眠ってしまうというだけで、誰かに絡んだり、大きな声を上げたりすることはない。
だから冴子にしてみれば、扱いやすいといえば、扱いやすかった。
とはいえ、今夜はいつも以上に千鳥足の真理江である。
一抹の不安もあるが、とりあえず外に出てタクシーを拾いさえすれば何とかなるだろうと、真理江の腕を抱くようにして、エレベーターで階下に降りることにした。