ベイビーベイビーベイビー
今にも眠ってしまいそうな真理江であるから、油断をすると次第に重みを増し、冴子は時折「真理江!」と声を掛けて真理江の意識を引き戻す。
そして「世話が焼けるわねぇ」と言いながら、やっとビルから外に出ると、冴子はタクシーが拾えそうな場所を探した。
外に出てみれば連休最終日だからなのか、さほど人の数も多くなく、これならばタクシーもすぐに拾えそうであった。
一瞬はホッとした冴子であったが、しかし待てど暮らせど、なかなかタクシーが現れない。
それに加え、夜もふけた東京の街は、想像よりも寒かった。
「もう~!」
冴子は寒さに震えながら、隣で幸せそうな顔をして自分にもたれている真理江を、このときばかりは心底羨ましく思うのだった。