ベイビーベイビーベイビー
 

 これまで冴子は何かと佐竹にメールを送り、自分の存在をアピールしていた。

 だから佐竹も自分の気持ちを少なからず知っているはずであった。

 けれど今こうして過ごす中で、佐竹はそれには一向に素知らぬ風である。


 やはり自分にとって、佐竹は高嶺の花であったのだと、冴子は思い知らされたような気がした。


 そして、よくよく考えてみれば、佐竹には真理江こそがお似合いなのではないか?

 今夜自分は、佐竹と真理江の出会いのタイミングに立ち合ってしまったのではないか?


 そんな事を考えれば考えれるほど、冴子はいつものテンションで佐竹に向き合う事が出来なかった。


 そうして会話も弾まぬ内に、タクシーは冴子の住むマンションの近くまで来ており、カーナビによりそれを見止めたドライバーはゆっくりと車のスピードを落とした。


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