ベイビーベイビーベイビー
突然の展開に慌てたのは冴子であった。
慌ててタクシーから降りると佐竹に続いてエントランスをくぐり、入り口のオートロックを開錠しながら、今日の出掛けに、自分の部屋がどうなっていたかを必死で考えた。
しかし残念ながら、今日はこれ程遅くなる予定ではなかったし、ましてや真理江を連れて帰ることになるなど思いもしないから、夕方取り込んだ洗濯物がそのまま放置してある事を冴子はすぐに思い出した。
それに気付くや否や、冴子の身体からアルコールが湯気を上げて蒸発していくかのように、一人顔を真っ赤に紅潮させた冴子は、
「ダメだわ!
佐竹さんにお見せできるような部屋じゃないわ!」
と言って、さほど広くないエレベーターホールで慌てた。