ベイビーベイビーベイビー
冴子の姿は、廊下を隔てた先のリビングで、簡単に見つけることができた。
未だ夢の中にいる冴子は、その身体を三人掛けのソファのくぼみにすっぽりと収め、なんとも安らかな顔をして眠っている。
その脇を見れば、真理江が昨夜着ていたワンピースとジャケットがカーテンレールに吊るされており、その真上では換気扇が回されていた。
時刻はやっと6時になるところであったが、戸惑いながらも真理江は、小さく、「冴子、冴子」と冴子の名前を呼んだ。
やがて、
「ん……? …真理江?」
その声に気付き、薄く目を開けた冴子と、不意に目が合う。
「おはよう、冴子。
ごめん、私、昨日――」
努めて小さな声で話し始めた真理江に、冴子は、
「なんだ、まだ6時じゃない…。
もう起きたの?大丈夫?」
と未だ眠そうに呟いた。