ベイビーベイビーベイビー
 

 脱衣場と兼用になっている洗面スペースには、冴子が真理江の為に用意しておいたと思われるタオルを始め、新しいハブラシやストッキングなどがひとまとめにして置いあった。

「冴子――」

 真理江はそれ以上の言葉を出せなかった。


 真理江は、色恋沙汰で誰かに迷惑を掛けることを、何よりも愚かしい事だと思っていた。


 それなのに今の自分自身はというと、一番嫌っていたはずの姿で、冴子に過剰な程の世話になっている。

 そんな自分の事が、真理江は心底嫌になった。


 しかし残念ながら、それはまだ真理江の悲劇の序の口でしかなかった。


< 396 / 475 >

この作品をシェア

pagetop