ベイビーベイビーベイビー
 

 真理江がシャワーから上がる頃には、冴子も起きだしており、カーテンが開けられたリビングには、真新しい朝の光が満ち満ちていた。

 二人はまるで姉妹のように、洗面台やドライヤーを譲り合いながら、いつも通りに身支度を整える。

 そして、

「8時に出るからね」

と言いながら、真理江の分も朝食の用意を始めた冴子に、真理江は

「冴子、本当にごめんね」

と申し訳なさそうに謝った。


 冴子はいつも通りの明るさで「本当よ!」と軽く笑ったのであるが、

「あのね、それでなんだけど。
 そう、私はいいんだけどね――」

やや言いづらそうにそんな前置きを挟むと、

「今日出社したら、一応お礼だけ言って欲しい人が、いたりなんかして……」

と、何やら申し訳なさそうに付け足したのだった。



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