ベイビーベイビーベイビー
そうしてフロアの社員たちに背を向け、黙々と作業行程表を作成する佐竹の作業が乗ってきた頃である。
佐竹は誰かが小走りでこちらに駆け寄ってくる気配を感じた。
自分の名を呼ぶ、聞きなれない女性の声。
その声に振り向いた佐竹の目の前に、昨夜と同じ服装なのにも関らず別人のような――いや本来の姿がこちらなのであろう――相変わらず華やかで人目を惹く凛とした姿の真理江が立っていた。
「あぁ、誰かと思えば、小林さんじゃないか!
もう大丈夫なの?」
「あの――。その件で来ました。
昨日は折角の休日なのに佐竹さんにまでご迷惑をお掛けしちゃって、本当にすみませんでした」
詫びの言葉を全て言い終わらないうちにも、揃えた両手を自分の膝に押し当てた真理江は、佐竹に深々と頭を下げた。