ベイビーベイビーベイビー
 


「男の僕が言うのもなんだけど、彼女はたくましいね。
 世話焼きだとは自分でも言っていたけど、そこまではなかなか出来ない。
 本当にいい友だちを持ったな!」


 真理江があれほど酒に酔うなんていうのは、余程辛い事があったのだろうと佐竹でも想像がつく。

 恐らく冴子は飲んでいる傍からそんな真理江の全てを引き受け、もちろん、その後も一人で引き受けるつもりだったのだろう。

 その冴子の逞しさを思えば、佐竹の顔には、自然と優しい表情が浮き上がるのだった。



「冴子が居なかったら、私、どうなっていたかしれません」

 しんみりと言葉を溢す真理江に、

「失恋か――…」

 佐竹は思わず呟く。

「あ……。やだ、ご存知なんですね」

 佐竹は「しまった!」という顔をしたのであるが、真理江が笑みを浮かべたのを見て、少しだけ安心をする。

 そして「ごめん」と言って笑った。

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