ベイビーベイビーベイビー
 

「時間が解決する事って、確かにあるよ。
 失恋で出来た心の穴は新しい恋でしか埋められないって聞くけど――、
 それでいいんじゃないか?」


 佐竹には、真理江が然程恋愛に依存しているようには思えなかったし、自棄を起こして誰彼となく恋愛を求めるなんて事も考えられなかった。

 だから真理江は、真理江を大切にできなかった男の事は忘れ、新しい一歩を進めばいいと思った。


 佐竹のその言葉を聞いた真理江は、一瞬寂しそうな表情を見せると、

「私も冴子みたいになりたい。
 誰にも振り回されなくて、皆に必要とされるような――」

と呟いた。


 まるでタイプの違う二人の関係に目を細めながら、

「彼女は“いいお母さん”になりそうだね」

佐竹はいつぞや中瀬に告げたのと同じことを再び真理江に告げていた。


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