ベイビーベイビーベイビー
  

 これを聞いた中瀬は、先程までの笑顔はどこへやら、

「えっ?
 もしかして、佐竹さん、小林さんとプライベートで会われたんですか!?」

男性にしては大きすぎる程の目を更に大きく瞬かせると、遠慮もなく佐竹に訊ねた。



 数日前、随分と年下である自分の不躾な誘いに付き合ってくれた真理江は、一日を通して自然体であった。

 中瀬は真理江とプライベートな時間を共有できた事が楽しくもあり、それは特別な出来事のようで誇らしくもあった。

 にも関らず、真理江が佐竹とも同じような時間を過ごしていたというのであれば、自分だけのとっておきの秘め事ではなくなったような気がして、残念以外の何物でもない。


 或いは。

 もしも万が一、自分の知らない内にも佐竹が真理江に好意を寄せていたとしたら、自分は先輩の想い人をドライブに誘い出してしまっていた事になる。


 それはそれで大変なことのような気がした。


< 412 / 475 >

この作品をシェア

pagetop