ベイビーベイビーベイビー
 
 佐竹は、

「お、よく分かったな?」

と、まず驚いた。

 そして、

「昨夜偶然会ったんだよ。あ、安藤さんもな。
 なんか相当落ち込んでるみたいだったけど、元気そうにしてて良かったよ」

と加えた。


 その答えの中にあった“偶然”“安藤さんも”という単語を耳にし、中瀬の心配は案外簡単に解消された。

「あぁ、そうだったんですね」

 中瀬の顔に再び笑みが戻る。

 しかしながら、真理江が“相当落ち込んでいた”というところに関しては、

「でも、落ち込んでいるとか、全然そんな風には見えなかったなぁ」

と、先程の様子に加え、横浜へ行ったときの事を思い出しながら中瀬は思わず呟いた。

「だよな?
 会社ではああして何事もなかったかのように振る舞えるんだとしたら、そこは彼女の凄いところだよな!」

「本当ですね」

 中瀬は佐竹に賛同するかのように深く頷いた。


 
< 413 / 475 >

この作品をシェア

pagetop