ベイビーベイビーベイビー
「さてと!そろそろ仕事するぞ!」
佐竹が思いがけずゆっくりとしてしまった空気を、一旦引き締めた。
中瀬は
「あ、はい! 僕も席に戻ります!」
とその号令に従うと、佐竹の向かいの席から立ち上がった。
そして「おう!」と片手を上げる佐竹に頭を下げ、早足で自席へと戻った。
そして再び伝票のチェックを始めた中瀬。
しかし作業をしながらも、横浜での真理江の姿を思い出さずには居られなかった。
――大人だから
「あの日のあの言葉って――」
想像よりも瑞々しく真理江の言葉たちが蘇る。
そして中瀬は、やっと、真理江の恋愛が上手くいっていなかった事に気付いた。