ベイビーベイビーベイビー
 

 そして、冴子がそんな風にして三度目の伸びをした頃、暫く席を外していた真理江がこちらに戻るのが見えた。

 
 冴子と目があった真理江は、冴子のそのいつもと変わらぬ様子に笑顔を浮かべながら、

「佐竹さん、怒ってなかったわ!」

と、佐竹の機嫌が悪く無かったことを、ホッとした様子で早速冴子に報告した。

「だから大丈夫だって言ったじゃない」


 冴子は其れほど佐竹を知るわけではないが、そのような事で怒るような小さな男性でない事は分かるし、例え佐竹でなくとも、昨夜の普段とは別人のような、そう、まるで子どものように無防備で可愛いらしい真理江を見て、気を悪くする男性などいるのだろうか?とも思う。


 冴子はこれが真理江の計算によるものではないと分かっているだけに、その無邪気さと人の善さを羨ましく思った。



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