ベイビーベイビーベイビー
綾乃が過ごしてきた一週間という時間は、祥吾がいなくなった事への哀しみだとか、これから先のことを考えなければという不安だとかに苦しむよりも、自らの不幸を振り返る日々であった。
綾乃の心は、祥吾が生きていた時とはまた質の違う虚無感が占拠されていた。
またそのような綾乃の姿は、家族の目にも不幸の象徴のように映り、今まで以上に綾乃に気を遣うのだった。
綾乃は相変わらず唯一安心できる自室で、ただひたすらにぼんやりとして生きていた。
あれ以来毎日のように訪ねてくる姉が、綾乃と顔を合わせる度に、
「そんなに部屋にばかり閉じこもっていちゃダメよ」
と言葉を掛けるのであるが、しかしだからといって姉自身どうしたらいいのかは分からなかった。
ただ綾乃がこれまで以上に塞ぎ混み、心を閉ざして逃げていても、有意義な答えが見つかるとも思えなかった。