ベイビーベイビーベイビー
祥吾の初七日にあたるこの日の昼過ぎにも、姉は町田の実家を訪れた。
姉は母親と雑談を交わしながら、普段は閉じられている事の多い仏壇に持ってきた菓子を供えると、仏前に座り、母親と同様に静かに手を合わせた。
とその時、姉の声が聞こえたからなのか、いくらか痩せた綾乃が部屋から姿を現した。
綾乃は、
「二人とも、いくらうちの仏壇に手を合わせたって、ここに祥吾はいないんだから。
何をしたって無駄よ」
と仏壇の前に座る姉の背中に言いながら、綾乃たちが小さな頃からリビングに置かれている海老茶色をした固そうなソファに座った。
何だかんだと言いながら、自分が訪ねると顔を見せてくれる。
それは幼い頃と何ら変わらず、姉にしてみれば、やはり可愛い妹のままであった。
綾乃の姿を見た姉は、微笑みを浮かべて振り返った。
そして綾乃を追いかけるようにして姉もソファに腰を下ろした。