ベイビーベイビーベイビー
 

 相続についての話し合いは、綾乃は父親に一切を任せていた。

 自分の事なのに、とても大切なことなのに他人によって決められていく。
 その様子を見ながら、綾乃はどんどん冷めていった。


「祥吾さん、結婚した時に保険に入っていたんですってね。
 それに預金も全部相続させてもらえるって。
 離縁って聞くと寂しい気持ちにもなるけど、あちらのご両親もあなたの将来の為に進めてくれているんだと思うわ。
 そう思いましょうよ」


 思い返せば、綾乃たちは三年もの間ずっと、先の見えない別居生活を送っていた。

 いずれは答えを出さなくてはならないものを、祥吾も綾乃も先延ばしにしていた。


 こういう形で終止符が打たれることは本意ではないけれど、綾乃の家族にはひとつ問題が解決したような思いもあったに違いない。



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