ベイビーベイビーベイビー

　

　
「祥吾の家族に突き放されるくらいなら、祥吾に突き放された方が良かったわ。
　祥吾の家族に言い返す言葉なんてないもの。
　それに弁護士を頼むなんてね。
　結局は私と関わりたくないのよ」


　それでも、相変わらず、綾乃は子どものように拗ねた。


　姉はこの時、綾乃が祥吾が死んでしまった事にまるで無関心であるような気がした。


「綾乃ちゃん、あちらのご両親は大切な息子を亡くしたばかりなのよ？
　親の自分たちより先に息子が逝ってしまうなんて、想像しただけで残酷。
　相続の事くらい専門家に任せさせてあげなさいよ」

　姉は子どもに言い聞かせるように綾乃に言うと、自分を祥吾の母親に重ね合わせたのだろうか、瞳に光るものを浮かべた。


　そして、まさか綾乃が、今度は祥吾の死からも逃げようとしているのではないか？と、嫌な想像を駆け巡らせた。