ベイビーベイビーベイビー
 

 今までの自分を冷静に振り返れば、ふわふわと空気を漂うような頼りないもので、全くの手ごたえを感じない流れに身を任せていたことに気付く。


 仕事が充実しているのに紛れ、その脆さ、危うさに目を向ける事をしてこなかったから。
 もしくは、自身を過信し過ぎていたから。


 まさか――…。


 祥吾が自分の前から姿を消し、当たり前に心は乱されたものの、皮肉なもので真理江はようやく自分自身の人生について、冷静に考えられるようになったのだった。


 そもそも、自分を裏切ったであろう恋人は、妻の元に戻っただけなのである。

 自分が誰の何を責められようか?


 祥吾の妻とおぼしき人物を目にしてからというもの、真理江の気持ちの変化は著しかった。


< 459 / 475 >

この作品をシェア

pagetop