ベイビーベイビーベイビー
 

 そんな大切なタイミングに泥酔してしまった自分を思い返すたび、真理江はほとほと自分が嫌になった。


 そして、傷付いているはずの冴子が、傷付いている自分を思って言ってくれているのか、

「佐竹さんて、真理江とすごくお似合いなんじゃないかと思っちゃったんだよね」

――と言い出したとき、真理江は心底哀しかった。

 聞いて、胸が痛かった。


 そのような冴子に、またしても自分の身の振り方なんていう贅沢にも思える相談など、しかも佐竹の古巣であるアメリカへの異動の話など、相談できるはずがないのだった。


 冴子と顔を会わせれば、いつも通り他愛もない風に過ぎて行く時間。

 真理江の罪悪感に、冴子は気付いてはいないようであった。








~『ベイビーたちの時間』 真理江 ~

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