ベイビーベイビーベイビー
 


 しかし浮き足立っている麻美には、誘いがメールであるか電話であるかなどは問題ではないようで、

「お父さやも藤堂さんみたいなオジサンには分からないのよ。
 だいたい仕事をしていると、メールの方が時間を気にしなくていいから便利だし。
 それに私も変に緊張しないで済むから、寧ろラッキーなのよ!」

と、全く聞く耳を持たない。


 それどころか、

「あんな素敵なお店に連れて行って下さるなんて!
 あぁ、何を着ていこうかしら!」

と、うきうきとしている様子を隠そうともしなかった。


 そのような麻美を見ては、ますます面白くない藤堂である。

「男がよく思わない男なんて、やめておいたほうが賢明だと思うけどね!」

 と、憮然として言ってみたのであるが、

「お父さんだって藤堂さんだって小島さんのことを何も知らないでしょう?
 それなのに“よく思わない”なんていうのもおかしいと思うわ。
 邪魔しようっていったって、ダメなんですからねぇ」

と麻美は口を尖らせるばかり。


 それを聞いた父親は「やれやれ」といった表情を浮かべると、藤堂と目を合わせた。
 その眼は、藤堂に「もう何を言っても無駄だよ」と言っているようであった。




< 468 / 475 >

この作品をシェア

pagetop