ベイビーベイビーベイビー

Daily3 百合子

 
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 東京は世田谷。
 重厚なレンガ造りの家の外壁には、所々に蔦がその緑を伸ばしている。

 ここは百合子の暮らす家だ。

 それは閑静な住宅街の一角にあって、他よりも一段高い石垣の上に建てられていた。


 かつてはさぞかし見晴らしの良かったであろうこの場所も、今では視界を遮る大きな建物が増え、それ程良くはない。

 しかし門より中を覗けば、緑溢れる庭に色とりどりの蕾が次から次へと花を開かせており、それは眩しい程であった。



 3年前に百合子の夫が定年退職を迎えると、二人は自慢の庭を眺めながら、それぞれにのんびりと過ごす事が増えた。


 この日も家の用を済ませた百合子は、窓を開け放したリビングで温かい紅茶を楽しんでいた。





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