ベイビーベイビーベイビー
 

 帰りの車中、百合子は信号待ちで止まる度、先ほど麻美から貰った写真を眺めて微笑んでいた。

「麻美ちゃん、もう一度東京で暮らしてくれないかしらねぇ…」

 ふふ、と諦めにも似た笑いを漏らす。


 その時。

『うちの息子、今年で35歳になるのに、まだ独身でいるのよ――』

 熱海に住む友人である真佐子が、以前電話でこぼした愚痴が、不意に百合子の脳裏をよぎった。



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