ベイビーベイビーベイビー
Daily5 麻美
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日が傾き始めた頃、東伊豆では麻美が家へと車を走らせていた。
小柄な麻美が操るには少し大き過ぎる白のスポーツカーである。
下田にあるクリニックで事務の仕事をしている麻美は、残業などというものとは無縁の生活をしていた。
そのため毎日ほぼ定刻通りに仕事を切り上げると、麻美は真っ直ぐ自分の車に乗り込み、早々に家へと帰るのだった。
車での通勤など都会では到底考えられないが、交通の便が悪いこの地方では、別段珍しい事ではない。
それもあって、この大きな車は、就職が決まると同時に父親から通勤用に買い与えられたものだった。