ベイビーベイビーベイビー
片道30分程の通い慣れた道を走り終え、麻美が家に着くと、1台の見慣れたRV車が家の前に止められていた。
それは藤堂という男の車であった。
藤堂とは、この辺りにある地方銀行の行員をしており、麻美の父親が営む会社に出入りする男だ。
これがなかなか感じのいい青年であったから、もともと男の子が欲しかった麻美の父親は、彼が会社を訪ねると必ず母屋に上げ、世間話などに付き合わせていた。
藤堂自身も面倒見のいい男であったので、7つも年が下の麻美に“いいよう”に使われる事もあったのだが、本人はあまりそれを気に留めてはいない様子だ。