ベイビーベイビーベイビー
しかし麻美は すかさず、
「残念でした! 私、東京で暮らしたいの。
藤堂さん、ごめんなさいね!」
と、なにやら余裕のある笑顔でそれに返した。
「あはは! “こんなヤツは嫌だ”って言われずに済んでよかったよ!
ありがとうね、麻美ちゃん!」
藤堂も、今度は心から可笑しそうに大笑いし、麻美に答えた。
そんな自由奔放な麻美に今まで散々振り回されてきた父親は、
「おいおい、お前は伊豆の娘だぞ。本当に困った東京かぶれが……」
と、呆れたように呟いた。
父親からすれば大切に育てた娘を嫁に出さねばならない事だけでも苦々しいことであるのに、さらに遠く伊豆から離れたところに嫁ぎたがっている麻美の様子を見ては、胸中複雑な思いで堪らない気持ちになるのであった。
〜『ベイビーたちの日常』 麻美 〜