ベイビーベイビーベイビー
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 昼になり、冴子は、隣接するホテルの中にあるイタリアンレストランに真理江を誘った。


 ランチメニューにしては少し値が張るため、頻繁に訪れることはなかったが、その広々とした空間は日常から少しだけ切り離してくれる。

 運ばれてきた皿の大きさとパスタの盛り付けの“間”さえ、アーティスティックに感じられた。



「たまには息抜きしないとさ、見えるものも見えなくなっちゃうからね」

 冴子は向かいに座る真理江にそう言って、フフと笑った。

「そうね」

と頷いた真理江であったが、

「――…だけど、見ない方が幸せな事もあるかもしれないわよ?」

と続けた。



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