堕天使の涙
母親
「ひどい扱いを受けたよ、学校でも近所でも…。夜中に逃げ出して引越したけど、不思議なもんでね。どこからともなく噂は追い掛けて来るんだよ。」
既に私は彼を見る事すら出来ないでいた。
「僕は…何度も父さんを恨んだよ。何でこんな暮らしをしなくちゃならないのかって。全部…父さんのせいだって。」
身に付けた衣類は完全に水分を含み、肩から全身にかけて重みを感じでいたが、青年の発する言葉の一つ一つはその重さを増して行くものとなった。
「でもね…母さんは…。」
雨の音に掻き消されそうな小さい声で青年は続けた。
「絶対に父さんを恨んじゃいけないって…毎日のように言ってたんだ。母さんにそう言われると、不思議と恨んじゃいけないんだって思ったよ。」
ほんの少し肩の重みが減ったように感じた。
彼の足元なら見る事が出来るようになった…。
「母さんは死ぬ間際まで一度も父さんを悪く言わなかった…。だから僕は父さんを知りたくなった…。」
彼の言わんとする事がようやく全て飲み込む事が出来た…。
理解までには程遠いものの、そういう事かと…。
「本当に父さんは、みんなが言ってたように、金が欲しいが為に人を殺すような人なの
かって、どうしても知りたくなったんだ。」
ようやく彼の顔を見据え、続く言葉に耳を澄ませた。
「捜し出すのに苦労したよ…。」
彼も振り向き私を正面から真っ直ぐ見据えた。
既に私は彼を見る事すら出来ないでいた。
「僕は…何度も父さんを恨んだよ。何でこんな暮らしをしなくちゃならないのかって。全部…父さんのせいだって。」
身に付けた衣類は完全に水分を含み、肩から全身にかけて重みを感じでいたが、青年の発する言葉の一つ一つはその重さを増して行くものとなった。
「でもね…母さんは…。」
雨の音に掻き消されそうな小さい声で青年は続けた。
「絶対に父さんを恨んじゃいけないって…毎日のように言ってたんだ。母さんにそう言われると、不思議と恨んじゃいけないんだって思ったよ。」
ほんの少し肩の重みが減ったように感じた。
彼の足元なら見る事が出来るようになった…。
「母さんは死ぬ間際まで一度も父さんを悪く言わなかった…。だから僕は父さんを知りたくなった…。」
彼の言わんとする事がようやく全て飲み込む事が出来た…。
理解までには程遠いものの、そういう事かと…。
「本当に父さんは、みんなが言ってたように、金が欲しいが為に人を殺すような人なの
かって、どうしても知りたくなったんだ。」
ようやく彼の顔を見据え、続く言葉に耳を澄ませた。
「捜し出すのに苦労したよ…。」
彼も振り向き私を正面から真っ直ぐ見据えた。