堕天使の涙
涙は流れているのかどうか分からなかった。

雨が激しく顔を打ち続ける…。


下を覗き込む勇気の無い私は…ボストンバッグをゆっくりと開いた。

雨に濡れた札束が…。

一つ、また一つと取り出して行く。手に取っては次々と地面に叩きつける。     そうする内に札束とは違った何かが奥に見えて来た。

ゆっくりと取り出すと…それはまだ新しい野球のグローブだった。

更に奥にもう一つ、傷だらけになるまで使い込まれた子供用の小さいグローブが…。

もう枯れてしまったかと思っていた涙は再び溢れ出し、水溜まりに流れて行った。

水溜まりを跨ぎ、その二つのグローブを抱え、私はフェンスを登った。
                                       
あいつ、ちゃんとボール捕れるようになったのかな。

< 22 / 22 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop