堕天使の涙

「待て。」

気が付けば私は立ち去ろうとする彼の背中に言葉を掛けていた…。

「どうしたの?」

彼が驚いた表情で振り返る。男がこんな表情を見せたのは初めてではないだろうか。それもそのはずだ、私から彼に言葉を発した事自体あまり無いというのに、去り行く彼を呼び止めたのだから…。

「やる。今から…。」

興奮を抑えながら私は小さく、しかしはっきりと彼に意思表示をした。もう後戻りは出来ないだろうと理解した上で…。
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