[短編集]恋花
ピタッ。
と、男の人の動きが止まった。
思わず目をつむったせいで何が起こったかはわからない。
「いってぇ…」
ふっと目を開けて、最初に目にうつったのは、痛みに顔を歪める男の人の姿。
掴まれていた手のひらは離されていた。
男の人の足下に転がり落ちていたサッカーボールを目にしたあたしは、
思わず「うそ…」と言葉をなくしてしまった。
「おれの彼女になにしてんだよ」
サッカーボールに書いてある、何のキャラクターだかわからない落書き。