[短編集]恋花
しれっ、と、さっきまで息を切らしていたのがまるで嘘のような口調。
右手にサッカーボールを抱え、左手であたしを繋ぐハヤトが、夕日に照らされてまぶしい。
「言っとくけど、気づいてなかったの、おまえだけだから」
ナツキってバカだよな。
ハヤトはそう付け足したけど、その言葉は、そっくり彼に返してやりたい。
違うよ。
バカなのはあたしじゃなくて、ハヤトの方なんだよ、って。
「まったく、認めさせるのに13年もかかっちゃったよ」