[短編集]恋花
―――そもそもマキという人物は、現在俺の目の前にいるダイキの連れだった。
活発で、誰とでも仲良くするくせに、悪口ひとつ言わない。
俺からしてみれば、完璧と言ってもいいくらいの男だった。
…十人並みである顔は別として。
マキと俺は、親友、と呼べるほどの中ではなかったが、
会えばお互いなんでも話すし、隣にいて楽しい存在だった。
「リョウ、ちょっとこっちに来い。話がある」
ダイキは、俺の名前を呼んだかと思うと、そそくさと教室を出て行ってしまった。