[短編集]恋花
教室は、相変わらず、沈黙の闇。
廊下に出た瞬間、ダイキは真剣な表情を浮かべた。
「リョウ、いいか。
もう教室でマキの話はするな」
「はあ?なんでだよ?
おまえはマキが心配じゃねーのかよ」
廊下に出てすぐ、ダイキは意味のわからないことを言う。
マキとダイキは一番仲がよかったのに、ダイキは彼が心配ではないのだろうか。
「いいか。
マキは、もう、この世にはいない」
ダイキが言った言葉の意味が、全くといっていいほどわからなかった。
「…あいつは、“あの女”に連れて行かれたんだ」