[短編集]恋花
あの女。
と言われて思い出せる女なんて誰もいない。
「…なんだよそれ…?」
「リョウ、あの伝説知らないのか?」
「伝説…?」
つんざくように、チャイムの音が耳に響く。
突然俺たちの会話を遮断したチャイムだったが、
こんなところで区切れる話なんかじゃない。
場所を変えよう、と提案してきたのはダイキだった。
授業をサボり体育館裏へと移動した俺とダイキは、さっきの話題を掘り起こした。
「さっきの、女の伝説の話、詳しく教えてくれないか?」