[短編集]恋花

教室のうしろのドアを開け、恥ずかしさから、何も言わずにその場を立ち去ろうとした。


「…なんか、今日、いつもと違う…な」


扉が閉まるか閉まらないか、ギリギリまで達した時。

小さく呟く君の声が、あたしの耳に、届いたんだ。

まさか、幻聴じゃないよね?

君が言ってくれた言葉はあまりに小さすぎて、はっきりと聞くことはできなかった。

でも、あたしが聞いたのは、まぎれもなく君の声だったんだ。

ドキン、ドキン……。

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