[短編集]恋花
どんどん鼓動が大きくなり、しまいには君に聞こえてしまうのではないかと、
そんなことあるわけないと知っているのに、思わず不安になってしまう。
閉まりきっていない扉のかすかな隙間から教室をのぞくと、顔を真っ赤にした君の姿が目にうつった。
…気づいて、くれた。
いつものあたしと違うことに、君が、気づいてくれた。
嬉しさと恥ずかしさが、あたしの心を半分ずつ占めていく。
『今日、いつもと違うな』
他の誰に言われるより、君にそう言ってもらいたかった。