夢(ほし)職人ムムとワガママな絵本
「い、いえ! ただ、この絵本は親方の物にしては、珍しいなと思って…」
ムムは、裏返った声で答えました。
セルディはふんと鼻を鳴らして、絵本を拾い上げました。
表紙に付いたほこりを優しく払い、ニヤリと笑いました。
「この絵本はあたしのじゃないよ、預かってるだけさ」
セルディはそう言って絵本をテーブルの上に置きました。
「この絵本は迷子なのさ」
ニヤリと笑い、ムムに言いました。
「迷子、ですか?」