夢(ほし)職人ムムとワガママな絵本


「あの絵本は、40年前に流行った絵本でね。
たくさんの人間の手に渡ったんだよ。可愛いらしいストーリーに名作だと言われてもてはやされた。
けど、作者がその周りの期待に応え切れず、心を壊してしまって、文章を書くのを辞めちまったのさ」


セルディとムムは、場所を変えて話しました。


彼女はそう言って、またワインをらっぱ飲みしました。

「けど、その事に周りの人間は納得がいかず、あの絵本に対する態度を変えちまった。作者をののしったり、あんなの名作じゃない。駄作だ。って。まぁ、中には“ねたみ”や“ひがみ”もあっただろうね。パッと湧いた素人の童話作家が急に周りからもてはやされたら、面白く感じないヤツだっているだろうね」

そう言葉を切って、セルディはワインをぐびぐびと飲み干しました。


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