夢(ほし)職人ムムとワガママな絵本

「ねたみやひがみ……」

ムムは、セルディの言葉を繰り返しました。


「ムム。いいかい? ねたみやひがみ、人間の負の感情ほど恐ろしいものはないからね。その感情をぶつけられたら人間の夢はつぶれる。下手したら夢を亡くしてしまうかもしれない。
けど、誰しもが持っているものだ」

ムムは、黙ってセルディの話しを聞いていました。
まっすぐ目を見て、時折うなずきました。

「大切なのは、自分の夢を信じる事。他人の夢や幸せをねたんだって誰も幸せにはなれやしない。けど、今の人間たちはそこに気付けない。
現に、あの絵本がいい例さ。良いように振り回されて最終的にはゴミ箱行き。
あいつは、作者と読者に裏切られた絵本なのさ。
だから人間が嫌いなんだよ」


口を拭いながらセルディは言いました。

「…………」

ムムは黙り込んでしまいました。

絵本がどれだけキズついたのかを考えると胸が痛くなりました。 


「そうだねぇ……」

セルディは何か閃いた様でした。



「ムム、あの絵本と仲良くおし」


「えっ?」

俯いていたムムはセルディの言葉に、顔を上げ、目をぱちくりさせました。 


「あの絵本の心を開けておやり。これが今月の修業だよ」
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