-片翼だけの天使-
僕はすごく興味が湧いてきた。

「へえ、じゃあ今も舞台に立つの?見てみたいな。」

「ううん、今は離れて暮らしてるの。もう舞台には立たないわ。私、大人になったから…。あのね、今は弟が一座を継いでるのよ。私なんかじゃあ、お客は喜んでくれないわ。弟はいい女形になったし…。」


寂しそうに言うと僕を見た。
僕は又、まずい事いったと言う事に、ようやく気が付いた。
僕の表情を読んで彼女が言った。

「ほら、あーいうのってさ、お客はおばさんが多いの。子供のうちは可愛いって言うけど、大人になったら女形の弟のほうが人気あるのよ。笑。おひねりもたくさん入って…。私は用無しって訳。」


冬椿はおどけたように笑った。



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