-片翼だけの天使-
「ありがとう。待った?」


蛍子は大きな目で僕を見ながら言った。


「あ、いやさっき来たばかりさ。」

「そう、悪いわねわざわざ持ってきてくれて。あー疲れちゃった。」

大きな目をクリクリ動かしてあたりを見渡すと、また僕を見た。

僕は慌てて鍵の入ったポーチを差し出した。


「ありがとう。じゃあついて来て。」


そう言うと蛍子は歩き出した。
僕はなんだかわからずにただ後に続いた。


「あの、終電が…僕はもう帰るよ。」


後から僕はそう言うと、彼女を見送ろうと立ち止まった。

蛍子はくるりと振り向くと僕にこう言った。


「なにしてるの?ついて来て。」


蛍子はまた、歩き出した。

僕はあわててついて行った。

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