人魚姫の涙~先生への想い~
『はるちゃん、どこ行くの?』
背筋が凍る思いって、こういうことを言うんだ。
その声を聞いたとき
私は動けなかった。
玄関で片足だけ履いたブーツは、もうきっと履く必要がない。
終わりだ
もう終わりだね
『ねえ、何してるの?』
振り向けば、そこに立っていたお母さんは私の腕をつかみ、部屋に引き込んだ。
手に持っていた携帯は、いつの間にかお母さんに奪われていた。
『はるちゃんはいい子だから、お母さんの言いたいことわかるよね?』
わかんないよ
あんたのことなんかわかりたくないよ
知らない
どうせ
じっとしてれば文句ないでしょ
『関わらないでって、お母さん言ったよねぇ!?二度と会うんじゃないって、言ったよねぇ!?』
しばらくして、足音が遠ざかっていくのが聞こえた。