ファースト*ラブ
驚いた顔で咲子をじっと見る。
嬉しそうに携帯をいじる咲子の瞳は輝いていた。
「で、でも咲子って彼氏いなかったよね!?」
咲子の顔にさまりながら私は問い詰める。
「は?夏休み前までだよ、それは」
「えー!?咲子、水泳ばっかやってたんじゃないのー!?」
……おかしい。
前までは咲子だって「彼氏ほしい」とか毎日のように言ってたのに。
これじゃ私…一生独身!?
「まーいいじゃん。彼氏いないほうが小夜らしいよ」
すぐ隣でミユウがぼそっと呟く。
「…うんうん。そーだよね。私にはそっちのほうが…って何、それー!ひっど!ミユウ、彼氏いるからって…酷いよ!」
「はいはい、うるさいよ」
クールにミユウが私の言葉を無視した。
実はミユウにも彼氏がいる。噂によれば超ラブラブらしい。話によるともう、3年も付き合っていて結婚するんじゃないって言われている。
ミユウの彼氏はイケメンで有名な藤方雅。
一学期の新生徒会長決めで圧倒的に選挙に受かり、現在の生徒会長。
一見クールなのにミユウには甘えているらしい…
男は可愛い女の子に弱いものね…
「ま、小夜にも彼氏いんだからいいじゃん?」
まだ携帯をいじりながら咲子がそう言った。
「…へ?私、彼氏いないけど」
「何言ってるの?いるじゃない」
今度はミユウがにやけながらそう呟く。
「分かんないのー?だーかーらー…」
ガラガラッ
勢い良く、教室のドアが開いた。
そこに立っていたのは長身のバスケット男。
「ほらっ、彼氏のご登場だよ♪」
咲子がニヤッと口を緩ませながらそう笑った。