ファースト*ラブ









「だって卯月も桐沢もいるじゃん、彼氏」

木村は真剣な目つきで言った。


桐沢とは咲子の苗字。


「…何が言いたいの?あんただって彼女いないじゃん」

「そうだけど。でもそんな事言ってると幸せ逃げるぜ~」

と木村はケラケラ笑いながら言った。


「あんたに言われる筋合いはないけどね~」

私もつられながら笑って言った。

ミユウとか咲子が言うとおり、
周りからは彼カノに見えるのかな?

だけど、友達なんだよね、私たちの関係って。
そんなもんなのかな、木村にとっての私は。

私は木村の事、ずっと好きなのにな。


「じゃあな、立花」

「―…う、うん。じゃあね」

3番地の分かれ道で木村と別れた。

久しぶりに苗字で呼ばれ、ドキッとした。
いつもはずっと「お前」とかだったから。


そんな些細なことでも幸せに思う私。
でも木村が見ている人はきっと他の人だから…

そう思っていると胸が苦しく感じた。


そして通り道の中、私はちょっとだけ泣いた。


______
__




< 7 / 8 >

この作品をシェア

pagetop