ファースト*ラブ
「だって卯月も桐沢もいるじゃん、彼氏」
木村は真剣な目つきで言った。
桐沢とは咲子の苗字。
「…何が言いたいの?あんただって彼女いないじゃん」
「そうだけど。でもそんな事言ってると幸せ逃げるぜ~」
と木村はケラケラ笑いながら言った。
「あんたに言われる筋合いはないけどね~」
私もつられながら笑って言った。
ミユウとか咲子が言うとおり、
周りからは彼カノに見えるのかな?
だけど、友達なんだよね、私たちの関係って。
そんなもんなのかな、木村にとっての私は。
私は木村の事、ずっと好きなのにな。
「じゃあな、立花」
「―…う、うん。じゃあね」
3番地の分かれ道で木村と別れた。
久しぶりに苗字で呼ばれ、ドキッとした。
いつもはずっと「お前」とかだったから。
そんな些細なことでも幸せに思う私。
でも木村が見ている人はきっと他の人だから…
そう思っていると胸が苦しく感じた。
そして通り道の中、私はちょっとだけ泣いた。
______
__