Drop Piece
自然と琉の視線もテレビに向けられた。
「…聞きたいなら…率直に…聞いたらいいのに」
眉間に少しだけ皺を寄せて、睨むように女性記者を見る琉。
俺はただ朝浜の返答を待った。
〈あぁ〉
くすり、と画面の中であいつが笑った。
〈まぁ、今は“お泊り”なんかをしてくれる彼女はいないですね〉
あのスキャンダルを連想させるような口振りからは余裕を感じた。
「…てことは…やっぱり……あの記事は嘘なんだね」
「当たり前」
馬鹿だってそう言い切ってたしな。
俺はテレビに興味を失くしテーブルにあるペットボトルに手をかける。
〈だけど〉
〈好きな人は、いますね〉
思わず口に含んだスポーツ飲料を吹き出しそうになった。
一斉に記者たちが朝浜に詰め寄る。
〈お相手は!?〉
〈秘密、です〉
朝浜の視線がこちらにむいた。
まるで画面越しに俺を見ているように。
〈大きな壁もありますし、攻め方とかも、わかんないですけど、ね頑張りたいな〉
意味ありげなほほ笑みに俺も口角を上げる。
「おもしれぇじゃん」
できるもんなら。
俺のエモノ奪ってみろよ。